──ゴホゴホと咳き込む声で、眠っていた意識が覚醒した。
 ベッドから上半身を起こし、周りを見渡せば一面の闇だった。
 窓の外を見ても、まだ星たちは光り輝いている・・・。
 (・・・なんだ、まだ明けてないじゃないか・・・・。)

ゴホゴホッ!!!

 苦しそうな咳は、自分の隣から聞こえていた。
 体を少しひねって隣を向くと、眠ったままの遊戯が、体を丸めて苦しそうに咳き込んでいた・・・。

 「・・遊戯!」

 苦しんでいる彼を少しでも癒そうと、背に手を伸ばしてそっとなぜる。
 咳の苦しみに涙がこぼれたのか、目元がうっすらと濡れていた。
 さすっても、さすっても、咳は止まらず、その苦しみが遊戯の表情を辛いものにさせていた。

 「だから、言っただろ・・・?」
 
 ハァ。
 軽くため息をつきながら彼を見る瞳は、「心配」の一色・・。
 そっと髪をなでる・・・。

 「・・・こんなに苦しむぐらいなら、ベッドに繋ぎ止めておけば良かったな・・・。」

 期末テストがあるからと言って、風邪を悪化させながらも、ソレ受けに学校へ行った。
 (止めておけと、言ったんだがな・・・オレは・・・。)
 『イヤ!!!!赤点採ったら、春休みが補習だらけになっちゃうよ!!!それは絶対にイヤ!!!!!』
 の、一点張り・・・。
 一度言い出したら絶対に考えを変えないのだ。
 オレの愛しい想い人は・・・・。

 「その代償が『コレ』か・・・。」

 少々、あきれていた。
 風邪をこじらせて眠る彼と。
 そんな彼を愛して止まない己にも・・・・。
 優しい存在の彼を愛してしまった自分。
 ・・・愛してしまったものは、しょうがない。

 「・・・寝るか・・・。」

 そう言いながらまたもとの位置へと体を横たえる。

 ゴホゴホッゴホッ!!!

 苦しそうに咳き込んでいる彼を、自分の腕の中に引き寄せて。
 背中に回した手に力を加えて
更に体を密着させると、パジャマ越しに熱を感じる・・・。
 遊戯の風邪熱を含んだ、甘く柔らかなにおいがした・・・。
 
「──愛している。」

この存在をこんなにも

「手離したくないんだ・・・・。」

オレの腕の中に

「お前を・・・。」


この腕の檻に閉じ込められると言うのならば。


 自分の腕の中でなにも知らずに眠る彼の額へと口付ける。

「・・・おやすみ、遊戯・・・。」

 しっかりと腕に抱きしめて、自分も眠りに落ちて行く・・・。






マエダケハ・・・ダレニモ渡サナイ








2004.3/25.17:00.pm

「Mad mind...

全くのパラレル小説になりました。
終わってみれば、もとの雛型からまったく違う作品に仕上がってしまったよーデス。
『何故だ・・・?』
初めは表君が風邪引いて苦しんでる所を、闇君が透ける体で何とかしてやりたくても出来なくて・・・。
ってジレンマしてる闇君が書きたかっただけなのに、何故実体が・・・?
なんてことは気にしないで下さい。
なんせパラレルですから・・・。

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Mad mind...